これはあいだ。

すきのはなし。

LUNGSのはなし。

LUNGS全33公演お疲れ様でした。

無事に、と言っていいものか分からないけど、最後まで走り抜けることが出来て本当に良かった。

オセローぶりの神山くんの舞台。昨年の正ロクはコロナ禍真っ只中で泣く泣く断念したので私も無事に行けて良かった。

 

素舞台も二人芝居も観るのは初めてでどんなものかとドキドキしていたけど、いやーーーすごかった。2人がずっと舞台にいる。ずっと喋ってる。それを100分ノンストップ。正気…??今までにない台詞の速さにちょっと気を逸らすと置いていかれそうで初めは必死に観てたけど、慣れてくるとその会話のテンポも心地良くなる。でもその分終わった瞬間の脳と身体の疲れがすーっごい。久しぶりにこんなに頭働かせたなーとなりました。

大阪公演終わって東京公演始まるまでに書こうと思っていた感想もなかなか纏められないまま気付けば東京公演が始まり、結果今に至るのですが残しておきたいな〜と思ったので感想まとめ。

 

これは初見の感想。

2回目の観劇後の感想。

観てすぐの感想なのでまぁ粗いし、わりと乱雑な感想だったかも。でも時間をかけて一つ一つ思い出しては考えて、の作業をしているとまた違う感想も出てくるんだな〜の気付き。なにより大阪公演と東京公演ではまた感じ方も違う。だから舞台って何度も見たくなるんだな。

 

 

観劇前は、多分今の私の年齢だから突き刺さることがあるんだろうなと思ってた。現に刺さる部分だってあった。でも実際観ると、終始カップルのあーでもないこーでもない会話とやりとりを客観的に遠くから覗いているような、そんな気持ちになった。たくさんいるカップルのうちの一つを見ているような。

世の中にお付き合いをされてる方や結婚されてる方は五万といて、私の周りにだってたくさんいる。でもどれだけ仲が良くて近しい人だって、その2人の間に起きていることの全てを知ることは絶対にない。見聞きすることはあっても、実際の生々しさだったりデリケートな部分は話してくれない限り知る由もない。だからLUNGSはその普段みんなが隠してるような芯を食った部分まで覗き見しているようなそんな気持ちで、形容し難いけど双眼鏡から覗いた世界を見ているような感覚だった。

 

 

Wは博士課程→博士号を取るような女性で、だからMよりWの方が知的で論理的だった。赤ちゃんを産むことで起こるデメリットや変化を環境問題とリンクさせて話すように、Wは'こうだからこう'みたいに論理立てて話してた気がする。で、この人めちゃくちゃ口が立つし感情の起伏がすごい。前半2人のやり取りは会話というよりWが一方的に自分の意見をMに突き刺してるような感じすらあった。落ち着いて対話しな?って何度も思った。こう、なんかちょっとヒステリックで情緒不安定な女性なのかなって印象すら持つくらい。でもそうやってガーッとMを理詰めしたあと、抱きしめてくれたらいいと思う なんて言って両手を上にバンザイしてMが抱きしめてくれるのを待ってるの、なんか小悪魔的で愛らしくもある。ずるい。知的で、ある程度のキャリアがあって、これからもっとそのキャリアを積める未来があって、いつだって正しく在りたいと思っているような女性。

 

Mはミュージシャン志望の男性で、経済的にも性格もなんだかちょっと頼りない。Wよりも子どもっぽくて、そういうところが可愛くて惹かれたのか、彼には私がついてなくちゃって気持ちを駆り立てるのか(じゃないとMとWが付き合うに至るまでの過程が想像つかない)。優しい人なんだろうなと思った、最初は。いや優しかったんだ終始、きっと。やってることは最低で最悪でくそ!ってなるんだけど。Wが感情的になるたび、不安を見せるたび「大丈夫だよ、そんなことないよ」って宥めているような、受け入れてる姿が印象的で。逆に言うと主導権がMには無くW主体で成り立ってる関係性なのかなと思う部分もあったり。劇中で本人も言ってたけどMは今現在しか見てない、というよりその時その瞬間の感情、本能で生きてる気がする。そういう行為をするときだってそう。己の理性に正直で素直なんだなと思った、良くも悪くも(自分が企画立案した会議すっ飛ばして彼女とセックスすな)。優しくてちょっと頼りなくて本能に忠実な男性。

 

ぐるぐるとLUNGSに思いを巡らせているんだけど、2人はあの未来を望んでいたのかな〜とぼんやり考えてて。もちろん流産後別れるまでは、きっと幸せな未来をお互い思い描いていたんじゃないかと思う。Mは子どもが欲しかったし、Wも妊娠出産に対する不安や自分の身体・環境変化、未来に対する不安はあるものの、子どもが欲しくないかと言われればそうでは無かった。

2人が別れた後、Wは誰とも交際せず関係も持たずにいたけどMは複数人とお付き合いして関係を持ってフィアンセも居て。それが男女差なのかと言われるとそうではないだろうけど、この場合Wは流産後なのでそりゃ誰か別の人とそうなることは心理的な部分で出来なかったんじゃないかなとも思う。そういう気分になれなさそうだもん。東京公演を見ているとWはMが好きで、だから別の人と一緒になるということに挑戦してみたけどダメだったのかなと思う。Wの方からMに連絡したことも、Mの靴下を捨てずにとっておいたことも、未練があったから取った行動に思える。というかWの奔放さや明け透けな物言いに対応出来る男性そうそう居ないのでは…?と思った。

その点Mは複数人の女性と出会って共にしていて、必ずしもWじゃないといけなかったのか?と言われると、そうでは無かったと思う。

 

この辺りのやり取り、WはMが自分と同じように別れた後も誰とも関係を持たず自分のことを想ってくれているかもって期待していて。あぁ、別れたあともWはMを好きだったんだなって思った。それまではMの方がWを好きそうだったのに、この辺からは逆に感じて。Wは'Mとの子ども'を欲しいと思っていたけど、もしかしたらMは'子ども'が欲しかったのかなーとか。だから相手は必ずしもWじゃなくて良かったのかな…と思ったりもした。そもそもMはあんなに子ども欲しい議論を重ねていたのに、結婚は渋るのなんでやねん。そういう形もあるのかもしれないけど。特に海外の作品だからこういう描き方なのかなぁとも思うけど。でもさぁーーーってなったよ、私は。

 

Wは相手がMじゃないとダメだったし、Mとの未来を望んでた。

でもMは相手がWじゃなくても他の誰かとそれなりに幸せな未来を創れたんじゃないかと思う。もしWから連絡が無かったら、そのまま会うことなくフィアンセと結婚してたんだろうな。

ここは本当に何も経験したことのない私には全て想像するしか無いんだけど…一度その人の子どもを身籠って流産等も体験してしまうと、その後別れたとしても次の人に進んだり別の人ととの未来を考えることは容易ではないのかな…と思った。身体的ダメージも精神的ダメージもあまりにも大きすぎるよね、、その点男性は多少の精神的ダメージはあるかもしれないけど、きっとそれって女性の何十分、何百分の一にしか過ぎない気がする。だからきっと別れても女性より未来への切り替えが出来るんじゃないかなって感じた。全部想像だけど。

 

Wが流産して塞ぎ込んでしまったとき。Mはちょこちょこ声をかけたり気にかけたりしてたけどWはそれをずっと無視していて。後にWは"一緒に悲しんで欲しかった、何も言わなくても理解して欲しかった"等の言葉を投げるんだけど、難しいね…と思った。

悲しんでいる人がいた時、一緒に悲しむのがいいのか、変に触れない方がいいのか、その選択ってすごく難しい。もちろん相手との関係性の違いはあれど、ここでどうすべきなのかって正解は分からない。デリケートな部分だからこそ、余計どうするのが一番いいのかMは分からなかったし自分自身苦悩していたんじゃないかな。

でもWというか女性側のことを考えると、子どもが出来て産むまでの過程、女性への身体面や精神面の負担って計り知れないなと思う。子どもを作る行為は2人なのに、それから子どもを産み落とすまでは1人なんだもんね。どれだけサポートされても。そのプレッシャーや怖さは同性の私でも到底想像つかない。

東京で上手に入ったとき、初めてこの辺のMの表情が見えた。ステージの縁を歩きながら時間の経過とともにWに声をかけるM。初めは心配してるような表情だったのがWからの返答がなにも無くて、次第に疲れたような表情に変わる。そんな姿を見てると、好きな人に無視されるってどんな気持ちだろうとふと思う。Mは悲しんでないわけでは無かったし、Wが大切だったからこそ何とか励ましたくて自分一人の責任だと背負い込んで欲しくなくて、Mなりに寄り添ったんじゃないかなと思った。

 

 

ここまで書いてると私はだいぶM贔屓の人間なのでは…?と思うけど、どちらかというと多分そう。Wと付き合っていながら浮気したり、フィアンセがいながら流れで元カノ(W)と行為に及んだり、挙げ句の果てには妊娠させたり。はぁ???と思うところはめちゃくちゃある。でもMのことを心からクソみたいな人間だと思えないのは、ちょっと頼りない可愛げだとか憎めなさとか、そういうことかも。この役をかみちゃんじゃない別の人が演じていたら全く違う人になっていた気がするし、その時も同じように思うかと言われたら多分そうじゃない。クソ男!と思うかもしれない。神山担だからと言われればそうなのかもしれないけど、かみちゃん自身が持つ愛らしさや優しさも少なからずMに表れていた気がする。舞台上のMを(かみちゃんだ…)と思うことは無かったんだけど、このニュアンス分かる…?

 

あと私がどうしてもM寄りになってしまうのは、Wの言動にあまり共感出来なかったことも大きい。観劇数を重ねるほどWのことを苦手だなーと思ってしまった。頭が良いからこそ論理的で相手を理詰めして、相手を思いやる前に棘のある言葉を発する。でも肝心なことは何も言わなくても分かって欲しいと言葉にしなくて。もっともっと聞く耳持てばいいのにって思うし、Mの親のことめちゃくちゃ悪く言うのに自分の親のことになるとめちゃくちゃ怒る。なんだそれ理不尽だろってなった。あとやっぱどう考えてもフィアンセに電話で謝りたいと声を上げるWが無理すぎる。どういうつもり?!フィアンセの心情煽るだけじゃん…!とすら思った。

私はもう後半フィアンセとして物語を見ていたので、この辺のシーンはほんっと怒り狂いそうだった(笑)だって、3ヶ月後には結婚して幸せになる予定だったのに。急に連絡してきた元カノに全部取られるんだよ。おまけにお腹には赤ちゃんがいます。無理無理無理。そんなの。そんなフィアンセに肩入れしながら見ていたのでMに久々に連絡してきたWはワンチャン期待してたでしょ?(言い方が最低だけど)とも思うし、もう二度と会わないと言ったのに急にMの家を訪問してきて妊娠した姿を見せながら"あなたならどうにかしてくれると思って"と言い出すWは、Mがフィアンセと一緒にいること少なからず頭の片隅にあったでしょ…?とも思ったり。

Wのこと滅茶苦茶言ってるのは分かってるけど、本当に私とソリが合わないだけなので悪しからず。もちろんWに共感したり感情移入する人だっていると思うし(というか女性は多分そういう方のほうがほぼだと思う)共感も感情移入も出来ないから悪いとか嫌いとか、そういうことでは決してない。ただフィアンセに一番肩入れしてしまう私の見方だったり感想は、きっと演者や演出サイドが求めていた考え方・受け取り方では無いのかもしれないな…とは思う。でも私はこの受け取り方が一番しっくりきてしまったので仕方ないね。

 

正直言うとこれまで観てきた舞台の中では多分私の好みじゃ無かったこの舞台。だけど、MとWに真摯に向き合うかみちゃんや佳恵さんの姿に圧倒されてしまったのは確か。こんなの33公演やるなんて、身も心も保たないでしょ…と思うくらい。現に大千穐楽の挨拶で"毎回心に深い傷を負いながらやっていました"と話すかみちゃんもいたし。

佳恵さんの聡明さがWの強さや脆さを表現していたように思うし、かみちゃんの愛嬌がMのちょっとおバカな可愛げだとか垣間見える優しさを表していたと思う。なんか、ぺらぺら〜な感想になってしまったけど、例えば数年後このLUNGSを思い出すことがあったときにまた違う気持ちを抱いたり出来たら良いなと思う。観る人が置かれている環境だったりそれまでの生き方だったり性格だったり、本当に100人いれば100通りの感じ方がある舞台。男性側の感想も聞いてみたいので見学したWESTさんたちは原稿用紙1枚でよいので教えて下さい、の気持ち。

 

観ているこちら側も集中力や精神力が今まで以上に必要だったLUNGS、大きく体調を崩すこともなく完走できて本当に嬉しい。グローブ座の舞台に主演として立つ姿は今まで以上に大きく逞しく見えたし、大千穐楽で予定に無かったと話してた挨拶もすらすらと言葉が出てきてて感動しちゃったな。次はどんな人間の姿を見せてくれるのか、今からとても楽しみで仕方ない。

本当に本当に、お疲れ様でした!!